2010.02.09 Tue
猫日和393

忘れていたいつかの秋の想い出
いつもと違う服を着て
いつもと違う鞄を持って
いつもと違う靴を履いて
ちょっとだけお洒落して
彼と出かけた週末の奈良
早朝見上げた我が家の空はどんより曇り顔だったけれど
奈良の空は泣き笑い 白い空に眩しい光 キラキラ小粒の雫
チューインガムをポケットから取り出し
彼が私に勧める
「いる?」
「いらなーい」
彼は口をモグモグさせながら空を見上げ
私は木々の葉から滴る雨の雫を眺め
二人手を繋ぎ雨上がりの山道を歩いて行く
ジャリッ ジャリッ
ジャリッ ジャリッ
ジャリッ ジャリッ
ジャリッ カリッ!
「あっ」
足下を見ると雨に濡れた沢山のドングリ
人に踏まれ割れたドングリ
車に踏まれ潰れたドングリ
雨に濡れたドングリはみんな悲しげ
上ばかり見上げいていて
ちっとも気づかなかった
「ドングリ 持って帰る
奇麗なまあるいの探して
帽子を被ってるのがいいな」
二人で選りすぐったドングリ達は艶やかで
耳元で振ると優しい声で小さく笑う
カタカタ カタカタ
カタカタ カタカタ
彼は先ほど食べていたガムのケースを取り出し
まだ中に残っていたガムを全てポケットに放り
空き箱にして私に差し出してくれた
「これに入るだけにしよう」
秋の想い出がぎゅうぎゅうに詰められ
チューインガムの空き箱は宝箱になる

家へ帰ると小さな宝箱は鞄の隅に転がって
誤ってそのまま一緒に棚の奥へ仕舞まわれてしまった
[ いつもと違う鞄 ] は特別な日にしか出番がない
ドングリ達はずっと暗闇に眠らされてしまうことになった
数ヶ月が過ぎ [ いつもと違う鞄 ] の出番がまた巡って来た
久しぶりに手にするその鞄の奥底に小さくキランと光る箱
そっと開けるとまん丸だったあの時のドングリ達はみんな
パクリと口を割り「土に還りたい」とヒソヒソ囁き合っていた
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| 猫日和 | 17:45 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑


















